ポテトとサルバドーラ

海外文学の読書感想文

アメリカ文学

『本当の戦争の話をしよう』ティム・オブライエン

結局のところ、言うまでもないことだが、本当の戦争の話というのは戦争についての話ではない。絶対に。(p.140) 本当の戦争の話をしよう (文春文庫) 作者:ティム・オブライエン 文藝春秋 Amazon つい最近まで体調不良をきたすほど忙しかったのだが、先日よ…

『勝手に生きろ!』チャールズ・ブコウスキー

私の中には、とにかく真面目に、向上心を持つように方向付ける装置が内蔵されており、それがあまりにも自然な状態なので、そういったシステムを抱え込まないことの「軽さ」について想像するのが難しい。 ブコウスキーの仕事や人生に対する態度は、それとほと…

『サンアントニオの青い月』サンドラ・シスネロス

パドヴァの聖アントニウスさま。どうか、セックスするとき痛くない人が見つかりますように。(…)料理をしたり掃除をしたりしているのを人に見られても恥ずかしいと思わない、じぶんの面倒はじぶんで見られる人がいいです。(…)あなたがちゃんとした男の人…

『旅路の果て』ジョン・バース

人は、やってしまったことをもって、やりたかったこととして責任を取らなければならない(p.161) 旅路の果て (白水Uブックス (62)) 作者:ジョン・バース 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1984/01/01 メディア: 新書 痺れた。ジョンバース、旅路の果て。こ…

『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ

私はおまえを愛した。私は五本足の怪物のくせに、おまえを愛したのだ。なるほど私はあさましく、獣じみて、下劣で、何とでも言ってくれればいいけれども、それでも私はおまえを愛していたのだ、愛していたのだ!(p.507) ロリータ (新潮文庫) 作者:ウラジー…

『冷血』トルーマン・カポーティ

感受性が高く、繊細な人間というのは、世の中に不可欠な存在である。他者の痛みに共感し、その傷にそっと手を当てることができる人間がいない世界は、弱肉強食の荒野である。この世界をせめて生きられるものに変えてくれる「芸術」を生み出すのも、多くの場…

『最後の物たちの国で』ポール・オースター

久しぶりのポール・オースター。仕事がつらいなあ、人付き合いはしんどいなあ、と思い悩むときの劇薬として使える、とびきり気の滅入る物語だった。これさえ読めば、今自分のいる場所は少なくとも地獄ではないんだと安堵できる。 最後の物たちの国で (白水U…

『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー) 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2006/11/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 23人 クリック: 170回 この商品を含む…

『青い眼が欲しい』トニ・モリソン

白い肌、高い鼻、大きな目・・・女性に当てがわれる美の定規は、多くの場合、白人の身体的特徴を最大値に据えている。大部分のアジア人の自然な身体とは異なるそれらの理想に、自分自身を近づけるべく努力することを強要されてきた私たちにとって、この本の…