ポテトとサルバドーラ

海外文学の読書感想文

『サンアントニオの青い月』サンドラ・シスネロス

パドヴァの聖アントニウスさま。どうか、セックスするとき痛くない人が見つかりますように。(…)料理をしたり掃除をしたりしているのを人に見られても恥ずかしいと思わない、じぶんの面倒はじぶんで見られる人がいいです。(…)あなたがちゃんとした男の人…

『夜の果てへの旅』セリーヌ

戦争をきっぱり否定するのさ、そいつに加担する連中も、なにもかも、そういう連中とも、戦争とも、僕はなんのかかり合いも持ちたくない。たとえ奴らが七億九千五百万人で、僕のほうは一人ぼっちでも、間違っているのは奴らのほうさ(上巻p.105) 夜の果てへ…

『旅路の果て』ジョン・バース

人は、やってしまったことをもって、やりたかったこととして責任を取らなければならない(p.161) 旅路の果て (白水Uブックス (62)) 作者:ジョン・バース 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1984/01/01 メディア: 新書 痺れた。ジョンバース、旅路の果て。こ…

『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ

私はおまえを愛した。私は五本足の怪物のくせに、おまえを愛したのだ。なるほど私はあさましく、獣じみて、下劣で、何とでも言ってくれればいいけれども、それでも私はおまえを愛していたのだ、愛していたのだ!(p.507) ロリータ (新潮文庫) 作者:ウラジー…

『冷血』トルーマン・カポーティ

感受性が高く、繊細な人間というのは、世の中に不可欠な存在である。他者の痛みに共感し、その傷にそっと手を当てることができる人間がいない世界は、弱肉強食の荒野である。この世界をせめて生きられるものに変えてくれる「芸術」を生み出すのも、多くの場…

『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア=マルケス

マルケスを読んでいると、人間の愛や憎しみなどの感情は、決して秩序だったものではなく、本人以外は(あるいは本人ですら)容易に理解できない混沌である、ということに深く得心する。 百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez) 作者: ガブリエルガルシア=マ…

『ピンポン』パク・ミンギュ

■世界はいつも、善と悪とのジューススコア 「だから生存第一なんだ。僕らが死んだからって、僕らを殺した数千ボルトの怪物は発見されない。直列の電流を避けて、みんながとるに足りなくて、みんなが危険なこの世界でさ―だから生きなくちゃいけないんだ。自分…

『最後の物たちの国で』ポール・オースター

久しぶりのポール・オースター。仕事がつらいなあ、人付き合いはしんどいなあ、と思い悩むときの劇薬として使える、とびきり気の滅入る物語だった。これさえ読めば、今自分のいる場所は少なくとも地獄ではないんだと安堵できる。 最後の物たちの国で (白水U…

『地下室の手記』フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

強烈な自意識を抱えた人間のたどる思考回路が、150年前と現代で大した違いがないというのは驚くべきことである。 地下室の手記 (光文社古典新訳文庫) 作者: ドストエフスキー 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2013/12/20 メディア: Kindle版 この商品を含む…

『異邦人』アルベール・カミュ

この作品を初めて読んだ時の恐怖を、忘れることはできない。自分にとって蓋然性が高いと思われる選択を行って、日々誠実に生きていると、突然死刑を宣告されるという展開があまりにも恐ろしく、眠ることができなくなった。色々と思うところがあり、久々に再…

『舞姫タイス』アナトール・フランス

正義の罪深さをしみじみと考えさせたアナトール・フランス『神々は渇く』の感動を受け、本作を手に取る。『神々は渇く』のエヴァリスト・ガムランが革命のもたらす正義を狂信していたように、本作の主人公、修道士パフニュスは、キリスト教に対する排他的な…

『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス

とにかくこわい話だった。人口が流出していく山奥の小さな村で、だんだん独りぼっちになっていく恐怖、自分以外の最後の人間だった妻の頭がだんだんおかしくなっていく恐怖、死んだ人間の幽霊が当然のように家の中や村の中をうろうろしている恐怖、餓死寸前…

『転落・追放と王国』アルベール・カミュ

本の前半部、中編小説『転落』について書く。普段は1回読んだらとりあえず感想を書くのだが、今回は珍しく2回読んだ。初読後、何か重要なことが書かれていたはずだと思うのに、なぜか自分の言葉にそれを変換できないことに強い戸惑いを覚えたからだ(といっ…

『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー) 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2006/11/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 23人 クリック: 170回 この商品を含む…

『あまりにも騒がしい孤独』ボフミル・フラバル

昨年読んだ作品のなかで間違いなく五本の指に入る傑作だった。 あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2) 作者: ボフミル・フラバル,石川達夫 出版社/メーカー: 松籟社 発売日: 2007/12/14 メディア: 単行本 購入: 6人 クリック: 103回 この商品を含むブログ…

『ペスト』アルベール・カミュ

カミュの作品の感想を書くと思うと毎回憂鬱になる。この感動に自分の言葉が追いつくことは永遠にないだろうなと思うからだ。そして、物語に埋蔵された大事なことの10%だって自分は持ち帰ってこられなかったんだという無力感を感じるからだ。いつも大事な何…

『神々は渇く』アナトール・フランス

義憤というのは、人を酔わせて、どんな残虐行為でも平気で行わせてしまうという点で非常に危険なものである。 神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3) 作者: アナトール・フランス,大塚幸男 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1977/05/16 メディア: 文庫 購入: 1人…

『心臓を貫かれて』マイケル・ギルモア

すごい話だった。毎晩、夜更かししながら読み進め、悲しみとやりきれなさに押しつぶされそうな夜を過ごした。 心臓を貫かれて 上 (文春文庫) 作者: マイケルギルモア,Mikal Gilmore,村上春樹 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 1999/10/08 メディア: 文庫 …

『オレンジだけが果物じゃない』ジャネット・ウィンターソン

たいていの人がそうであるように、わたしもまた長い年月を父と母とともに過ごした。父は格闘技を観るのが好きで、母は格闘するのが好きだった。何と闘うかは、問題ではなかった。とにもかくにも、自分がリングの白コーナーに立っている。それが大事なのだっ…

『マイケル・K』ジョン・マックスウェル・クッツェー

豊かな時間だった。『恥辱』で、加害者の孤独を描く冷たい文体に魅了されて以来、気になっていたクッツェーの代表作『マイケル・K』をようやく読了。読後感はまさに「平穏」のひとことに尽きる。 マイケル・K (岩波文庫) 作者: J.M.クッツェー,くぼたのぞみ …

『長距離走者の孤独』アラン・シリトー

短編はそれほど好んで読まないけれど、古本屋でたまたま見つけ、タイトルは知っていたので「表題作だけでも読むか」と期待もせず買ったら、あっという間に全部読んでしまった。 長距離走者の孤独 (新潮文庫) 作者: アランシリトー,Alan Sillitoe,丸谷才一,河…

『青い眼が欲しい』トニ・モリソン

白い肌、高い鼻、大きな目・・・女性に当てがわれる美の定規は、多くの場合、白人の身体的特徴を最大値に据えている。大部分のアジア人の自然な身体とは異なるそれらの理想に、自分自身を近づけるべく努力することを強要されてきた私たちにとって、この本の…

『女の一生』ギ・ド・モーパッサン

自分が今持っているものを慈しんで生きるのは、とても難しいことである。いつも「ここではないどこか」「これ以上のなにか」を求めて、人は不幸になっていく。 女の一生 (光文社古典新訳文庫) 作者: モーパッサン 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2013/12/2…

『楽園への道』マリオ・バルガス=リョサ

普段、3冊くらいは同時に本を読むのだが、今回は『楽園への道』にだけひたすら夢中になった。面白くないページが無い、素晴らしい作品だった。 楽園への道 (河出文庫) 作者: マリオバルガス=リョサ,Mario Vargas Llosa,田村さと子 出版社/メーカー: 河出書房…

『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フローベール

ボヴァリー夫人 作者: G・フローベール 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/07/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 素晴らしい作品だった。名作に出会うと、しばらくその物語から派生する物思いに頭を占拠されてしまうものだが、本作はま…

『新編 不穏の書、断章』フェルナンド・ペソア

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー) 作者: フェルナンド・ペソア,澤田直 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2013/01/10 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (12件) を見る 全体を理解しようなんてことは、ほぼ不可能であ…

『タタール人の砂漠』ブッツァーティ

タタール人の砂漠 (岩波文庫) 作者: ブッツァーティ,脇功 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013/04/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (24件) を見る 今を生きることができないとはどういうことか。 人生の最も輝かしい瞬間、それは常に未来にある…

『デミアン』ヘルマン・ヘッセ

まさにこの本が必要だった時期が自分の人生にはあった。その時の自分にこれを渡すことができていたらと思う。 デミアン (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1951/12/04 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 322回 この商品を…

『夜明け前のセレスティーノ』レイナルド・アレナス

満を持して『夜明け前のセレスティーノ』を読む。主人公と秘密の友達になって小さな部屋に二人だけでいるような時間だった。自然な身体のリズムに伴走してくるこの感じ、まったく素晴らしい作品だった。 夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ) 作者…

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毎日の生活の中で読んだ文学作品の感想を綴っていきます。 本は、好きな作品の中で言及されているもの、気に入っているブログで紹介されているものなどを選んでいます。 さて、はじまりはじまり。