ポテトとサルバドーラ

海外文学の読書感想文

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『オレンジだけが果物じゃない』ジャネット・ウィンターソン

たいていの人がそうであるように、わたしもまた長い年月を父と母とともに過ごした。父は格闘技を観るのが好きで、母は格闘するのが好きだった。何と闘うかは、問題ではなかった。とにもかくにも、自分がリングの白コーナーに立っている。それが大事なのだっ…

『マイケル・K』ジョン・マックスウェル・クッツェー

豊かな時間だった。『恥辱』で、加害者の孤独を描く冷たい文体に魅了されて以来、気になっていたクッツェーの代表作『マイケル・K』をようやく読了。読後感はまさに「平穏」のひとことに尽きる。 マイケル・K (岩波文庫) 作者: J.M.クッツェー,くぼたのぞみ …

『長距離走者の孤独』アラン・シリトー

短編はそれほど好んで読まないけれど、古本屋でたまたま見つけ、タイトルは知っていたので「表題作だけでも読むか」と期待もせず買ったら、あっという間に全部読んでしまった。 長距離走者の孤独 (新潮文庫) 作者: アランシリトー,Alan Sillitoe,丸谷才一,河…

『青い眼が欲しい』トニ・モリソン

白い肌、高い鼻、大きな目・・・女性に当てがわれる美の定規は、多くの場合、白人の身体的特徴を最大値に据えている。大部分のアジア人の自然な身体とは異なるそれらの理想に、自分自身を近づけるべく努力することを強要されてきた私たちにとって、この本の…

『女の一生』ギ・ド・モーパッサン

自分が今持っているものを慈しんで生きるのは、とても難しいことである。いつも「ここではないどこか」「これ以上のなにか」を求めて、人は不幸になっていく。 女の一生 (光文社古典新訳文庫) 作者: モーパッサン 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2013/12/2…

『楽園への道』マリオ・バルガス=リョサ

普段、3冊くらいは同時に本を読むのだが、今回は『楽園への道』にだけひたすら夢中になった。面白くないページが無い、素晴らしい作品だった。 楽園への道 (河出文庫) 作者: マリオバルガス=リョサ,Mario Vargas Llosa,田村さと子 出版社/メーカー: 河出書房…

『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フローベール

ボヴァリー夫人 作者: G・フローベール 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/07/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 素晴らしい作品だった。名作に出会うと、しばらくその物語から派生する物思いに頭を占拠されてしまうものだが、本作はま…

『新編 不穏の書、断章』フェルナンド・ペソア

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー) 作者: フェルナンド・ペソア,澤田直 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2013/01/10 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (12件) を見る 全体を理解しようなんてことは、ほぼ不可能であ…

『タタール人の砂漠』ブッツァーティ

タタール人の砂漠 (岩波文庫) 作者: ブッツァーティ,脇功 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013/04/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (24件) を見る 今を生きることができないとはどういうことか。 人生の最も輝かしい瞬間、それは常に未来にある…

『デミアン』ヘルマン・ヘッセ

まさにこの本が必要だった時期が自分の人生にはあった。その時の自分にこれを渡すことができていたらと思う。 デミアン (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1951/12/04 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 322回 この商品を…

『夜明け前のセレスティーノ』レイナルド・アレナス

満を持して『夜明け前のセレスティーノ』を読む。主人公と秘密の友達になって小さな部屋に二人だけでいるような時間だった。自然な身体のリズムに伴走してくるこの感じ、まったく素晴らしい作品だった。 夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ) 作者…

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毎日の生活の中で読んだ文学作品の感想を綴っていきます。 本は、好きな作品の中で言及されているもの、気に入っているブログで紹介されているものなどを選んでいます。 さて、はじまりはじまり。